毎月、アクセス数や問い合わせ数をまとめて会議で報告している。けれど、報告を聞くだけで行動につながらない。そんな状態になっていないでしょうか。
数字が増えた月は「よかったですね」で終わり、減った月は理由を探して終わる。これを繰り返しても、サイトは何も変わりません。見直したいのは、どの数字を見て、誰が何を決めるかです。
KPIは、測れる数字の中から選ぶのではなく、「この数字が変わったら、誰が何を決めるのか」から選びます。事業の目標からサイトの役割を決めれば、見る数字も、数え方も、報告の仕方も決まってきます。

KGI・KPI・KSFを、サイトに当てはめる
指標の話では、似た3つの言葉が出てきます。KGIは、最終的な目標をどこまで達成できたかを確かめる指標です。KPIは、そこへ向かって順調に進んでいるかを確かめる数字です。KSFは、成果を出すために欠かせないと考える条件を指します。企業サイトに当てはめると、たとえば次のようになります。
- KGI(重要目標達成指標):法人向けサービスの受注件数
- KSF(重要成功要因):対象の企業がサイトでサービスの内容を理解し、気軽に相談できること
- KPI(重要業績評価指標):サイトから届いた新しい相談の件数と、そのうち商談に進んだ件数
受注が決まるかどうかには、営業の対応や価格の条件も関わります。受注の数をすべてサイトの成績にしてしまうと、数字が上がっても下がっても、サイトの何を直せばよいかが分かりません。
サービスのページが読まれたか、フォームが送信されたかは、アクセス解析で分かります。その相談が対応できる内容だったか、商談に進んだか、受注したかは、営業や受付の記録を見て分かります。サイトの記録と営業の記録をどこまでつなげて見るかを、指標を決める段階で決めておきます。
企業サイトには、問い合わせを集めるほかに、採用の応募を集める、今のお客さまに手続きを案内する、営業が商談で見せる資料になる、といった役割もあります。ページごとに役割を分け、今いちばん大事な目的を決めれば、見る数字も絞れます。
KSFは、確かめる前の仮説として扱う
KSFとして置いた「実績のページを見れば、相談が増えるはずだ」という条件も、自社のサイトで確かめるまでは仮説です。実績のページが本当に依頼先を比べる材料として読まれているか、営業が商談で案内しているかを見ていきます。
仮説として置くと、手を打ったあとに見る場所がはっきりします。サービスで対応する範囲の説明を書き足したなら、見るべきなのは閲覧数ではなく、対応できない内容の相談が減ったか、営業が商談で毎回補足していた質問が減ったかです。
判断したいことから、指標を選ぶ
指標の候補は、判断したいことの数だけ出てきます。
| 判断したいこと | 指標の候補 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| 必要な人に届いているか | 関連ページへの訪問 | どこから来たか、何を検索して来たか |
| 相談につながっているか | 問い合わせの受付件数 | 対応できる内容か、重複していないか |
| 営業につながっているか | 商談になった件数 | 問い合わせの内容とその後の経過 |
| 更新を続けられているか | 更新にかかる工程と時間 | 承認待ちなど、止まっている理由 |
候補をすべてKPIにする必要はありません。その数字が変わったときに、誰が何を決めるのかが思い浮かばないなら、それは報告のためだけの数字です。
中心に見るKPIは1つか2つに絞り、その数字が動いたときに原因を調べる情報を別に決めておきます。問い合わせの受付件数を中心にするなら、関連ページへの訪問、どこから来たか、問い合わせの内容が、原因を探る情報です。こちらには目標の数字を付けなくて構いません。
数字を追いかけたときの副作用も見る
フォームの入力欄を減らせば、送信はしやすくなります。その代わり、商談してみてから予算が全然合わないといった場合も起こります。送信件数だけで判断せず、対応できる相談か、商談に進めたか、担当者の手間がどう変わったかもあわせて見ます。
サービスの対象をはっきり書いた結果、問い合わせの数は減ったけれど、商談に進む割合は上がった、ということもあります。件数と、その中身を確かめる情報は、セットで見ます。
何を1件と数えるか、先に決める
フォームの送信ボタンが押された数、受付が完了した数、営業が対応した相談の数。この3つの数は、ずれることがよくあります。テスト送信、営業の売り込み、同じ人からの重複した送信をどう扱うかも含めて、何を1件と数えるかを決めます。
GA4の拡張計測機能には、フォームの送信を記録する仕組みがありますが、これは「ユーザーがフォームを送信したとき」のもので、問い合わせが担当者に届いたことや、その中身までは分かりません。受付の記録と並べて、どこがずれるのかをつかんでおきます。
出典:Google アナリティクス ヘルプ「拡張計測機能イベント」
受付件数とアクセス解析の件数が合っているかを確かめる手順は、ホームページから問い合わせが来ないとき、何から確認すればよいかで説明しています。
「問い合わせ件数」という名前だけでは、売り込みや今のお客さまからの連絡まで含むのかが分かりません。指標ごとに、何を数えるか、何を除くか、どこから数字を取るか、いつからいつまでを数えるか、誰が見るかを書き残します。新しい相談の件数なら、たとえば次のような表です。
| 項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 指標の目的 | 新しい相談がどのくらい始まっているかを見る |
| 数えるもの | 対象のサービスへの新しい相談として扱う条件 |
| 除くもの | テスト、重複、売り込みの連絡など |
| 数字の取り方 | 受付の記録と、必要に応じて担当者が付けた分類 |
| 確認の時期 | 集計する期間と、その後の経過を見直す時期 |
| 次の判断 | 件数が減ったとき、対象外の相談が増えたときに調べること |
問い合わせを受けた日と、商談になった日はずれます。10月に受注した案件は、7月に受けた問い合わせかもしれません。割合を出すなら、問い合わせを受けた月ごとに、その案件がどうなったかを追います。
電話や紹介、営業担当者を通じた相談は、サイトの計測に表れません。把握したいなら、受付や商談のときに「何を見て連絡したか」を聞いて記録します。
目標の数字を決める前に、今の数字を測る
目標を具体的にするときは、SMARTという考え方が使えます。目標を次の5点で確かめます。
| 観点 | 確かめること | サイトの目標での例 |
|---|---|---|
| Specific(具体的か) | 何を増やすのかが1つに決まっているか | 「問い合わせ」ではなく「対象サービスへの新しい相談」 |
| Measurable(測れるか) | 数え方と、数字を取る場所が決まっているか | 受付の記録で、テストや売り込みを除いて数える |
| Achievable(達成できそうか) | 今の数字と、打つ手から見て届くか | 今の月平均と、直すページの数から考える |
| Relevant(事業の目標につながるか) | 増えたときに、受注に近づくか | 対象外の相談が増えるだけの目標にしない |
| Time-bound(期限があるか) | いつまでに、いつ見直すかが決まっているか | 半年後に達成、3ヶ月目に途中で見直す |
今の数字が分からないなら、まず数え方をそろえて記録を始め、ふだんの件数や月ごとのばらつきをつかみます。目標を決めるときは、事業として必要な件数と、それを実現するために何を変えるかを分けて考えます。サイトに来る人を増やすのか、説明を直すのか、営業の対応を変えるのか。希望の数字を書くだけでは、計画になりません。
件数が少ないうちは、割合と実際の数を並べて報告します。問い合わせが月1件から2件になれば増加率は100%ですが、実際に増えたのは1件です。
報告では、数字のあとに「次に何をするか」を書く
毎月の報告に入れたいのは、中心に見る数字、何と比べたか、確かめられたこと、考えられる理由、次にすることです。理由がまだ分からないなら、どうやって確かめるかを書きます。「数字が下がったので改善します」では、何を変えるのかが誰にも分かりません。

問い合わせが減った月なら、次のように切り分けます。関連ページへの訪問も減っていれば、サイトに来る人が減っています。訪問は変わらず送信だけが減っていれば、ページの説明かフォームを疑います。計測の設定や受付の数え方を変えていれば、それも理由の候補です。こうして、次に調べる場所を絞ります。
毎月報告していても、誰も何かを決めるのに使っていない数字は、会議で見る数字から外し、必要なときに調べる側へ回します。
まとめ|数字からではなく、決めたいことから選ぶ
企業サイトのKPIは、測れる数字の一覧から選ぶものではありません。事業の目標からサイトの役割を決め、その役割を果たせているかを判断できる数字を選びます。
サイトに担ってほしい役割を1文で書き出し、それを確かめる数字を1つか2つに絞るところから始めてください。次に、何を1件と数えるか、誰がいつ見るかを決めます。毎月の報告では、数字の増減に加えて、何を調べ、どこを直すかまで話し合いましょう。
自社のサイトで何を測るか、整理したい方へ
事業の目標とサイトの役割から、確認する指標と改善の進め方を一緒に考えます。
