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全面リニューアルか、部分改善か。ホームページを作り直す前の判断基準

戦略的Webサイト
全面リニューアルか、部分改善か。ホームページを作り直す前の判断基準

ホームページを良くしたい。そう考えると、まずリニューアルが思い浮かぶかもしれません。けれど、今のサイトで成果をあげている部分まで作り直す必要があるでしょうか。課題のある箇所と残せる箇所を分けてみると、一部の改修で解決することもあります。

全面リニューアルの相談から、一部改修を提案した事例

弊社に、Webサイトをリニューアルしたいというご相談がありました。既存サイトを調査すると、デザインは古くなく、SEOでも上位表示されていました。一方で、主製品の説明と問い合わせへの導線には課題が残っていたため、この部分に絞った改修をご提案しました。

その部分を改善したところ、問い合わせ数に目に見える変化がありました。全面リニューアルに比べて時間とコストを抑えながら成果につながり、クライアントにとって費用対効果の高いプロジェクトとなったわけです。つまり、必ずしもリニューアルが最適解ではないのです。

建て替えか、増改築か。まず現状を診断する

建物でいえば、更地にして構造から建て直すのか、増改築するのか、今の構造を活かしてリノベーションするのか。Webサイトも、外観が古いという理由だけで、フルリニューアルに取りかかるのは早計です。

最初から「全面リニューアルをお願いします」と依頼すると、全面的に作り直すことを前提に話が進みやすくなります。改修範囲をまだ判断できていないなら、制作を依頼する前に、現状サイトの診断をプロに頼む選択肢もあります。

診断で確かめたいのは、困っている原因と、その影響がどこまで及んでいるかです。そこが分かれば、残せる部分と手を入れる部分を分けられます。依頼する側で用意したいのは、原因の答えよりも、実際に困っている場面です。

改修範囲を決める順序。1. 困っている場面、2. 影響する範囲、3. 残すもの、4. 改修の選択。

見直したい理由を、困っている場面に置き換える

「使いにくい」「伝わらない」だけでは、制作会社によって提案の範囲が大きく変わります。「サービスの違いを毎回電話で説明している」「実績の追加に外注が必要で更新が止まる」のように、業務で起きていることを伝えると、調べる対象を絞れます。

営業担当者には顧客が迷った点を、更新担当者には作業が止まる箇所を尋ねてみてください。経営者が気にしている見た目とは別の課題が出てくるかもしれません。困りごとがいくつも挙がったら、受注や日常業務への影響が大きいものから確認します。

困りごとには、起きている事実と推測を分けて書く

例えば「問い合わせが少ない」は事実ですが、「写真が古いから問い合わせが少ない」は原因についての仮説です。この2つを分けずに依頼すると、写真の差し替えが前提となり、本当は説明やフォームにある問題を見落とすことがあります。

相談の段階では、「問い合わせが少ない」という事実と、「写真に原因があると思う」という推測を分けて伝えれば十分です。原因まで決めてから依頼する必要はありません。

部分改善が向く場合と、全体の見直しが必要な場合

困っている場面が分かったら、その原因が1か所にとどまるのか、サイト全体に広がっているのかを見ます。最初に検討することの目安は次のとおりです。

状況最初に検討すること
主力サービスの説明だけが不足している対象ページの情報・原稿・導線を改善する
フォームまでの案内が分かりにくい関連ページのリンクとフォームを点検する
事業が変わり、分類やナビゲーションが合わないサイト全体の情報構成を見直す
更新方法やシステムの制約が多いCMSと運用を含めて調査する

1ページの問題か、複数ページに共通する問題か

サービスページに料金の考え方がないだけなら、情報を追加する方法があります。ところが、商品分類そのものが実際の事業に合っておらず、関連ページへも移れないなら、1ページへの追記では解決しにくい。分類やナビゲーション、一覧から詳細へ進む経路まで見直す必要があります。

同じように、CMSの入力項目を1つ足す改修と、複数ページで共有するデータの持ち方を変える改修では、影響する範囲が異なります。画面では小さく見える変更でも、共通部分に手を入れることがあるため、作業量は制作側に調べてもらいましょう。

全面改修が必要でも、すべてを同時に作るとは限らない

全体の構成を変える必要があっても、すべてのページを同時に完成させるとは限りません。まず主力サービスと会社情報を整え、素材が揃っていない実績紹介は後から追加する、といった進め方もできます。

この進め方を選ぶなら、後から増やしたいページや機能も初期設計の段階で伝えます。追加のたびに最初に作った部分を壊すことになっては、段階的に公開する利点が小さくなってしまいます。

全面リニューアルでも、成果が出る保証はない

全体を作り直す方向に傾いたら、得られるものと同時に、失うかもしれないものも確かめます。費用をかけて全体を新しくしても、成果が出るとは限りません。問い合わせが来ない原因を捉え違えれば、その問題を新しいサイトへ持ち越してしまいます。

失うおそれがあるものの代表は、検索から人を集めていたページや、他のサイトからリンクされているURLです。読まれていた情報を削ったり、URL変更時に適切な転送を用意しなかったりすると、検索や外部リンクからの訪問を損なうおそれがあります。

移行を適切に進めても、大きなサイト変更の際には、Googleが変更を把握する間に検索順位が一時的に変動することがあります。旧URLからの転送を準備するとともに、公開後の検索流入を確認する予定も立てておきましょう。

参考:Google Search Central「サイトの移転」

制作そのものが途中で行き詰まることもあります。目的や決裁者が曖昧なまま始めると、要望が増えるたびに判断が揺れ、手戻りや公開の遅れ、追加費用につながりかねません。公開できても、社内で更新できない仕組みや使われない機能が残れば、維持費と対応の手間を抱えます。事業を助けるはずのサイトが、負債になってしまう可能性もあるのです。

「残すもの」を決めてから費用を比較する

失いたくないものを守るには、新しく作るものに加えて、引き継ぐ原稿・写真・ページを決める必要があります。改修範囲の見積もりも、これが決まらないと出せません。既存ページを棚卸しして、「残す」「直す」「統合する」「調査してから決める」に分けます。

改修前後のページを比べ、残す情報を確認する様子

ページの棚卸しは、利用場面と管理状況も含める

アクセスが少ないページでも、営業資料や既存顧客への案内先として使われていることがあります。誰が何に使い、情報は正しく、誰が更新できるのか。URLとページ名だけでは分からない利用場面も、次の表のように記録します。

記録する項目改修範囲の判断にどう使うか
ページの目的・利用者今後も必要かを判断する
営業資料やメールからの案内URL変更の影響を確認する
情報の正確さ・更新日原稿の確認や作り直しを決める
写真・原稿の利用条件再利用できるかを確認する
更新方法と管理先CMS改修や引き継ぎの必要性を判断する

最初から全ページを調べきろうとせず、主力サービス、問い合わせ、営業で使う実績から始めて構いません。利用状況が分からないページは「調査してから決める」として、管理担当者に確認します。

部分改善と全面改修は、同じ期間・範囲で比較する

部分改修とフルリニューアルの金額だけを並べても、判断できません。その金額でどこまで直せて、公開後にどんな負担が残るのか。社内での原稿確認やデータ移行、今後の更新も含め、比較する作業と期間を揃えます。

比較項目部分改善で確認すること全面改修で確認すること
今の課題今回の修正で解消する範囲新構成でも残る課題の有無
社内作業部分修正に必要な原稿・確認全体の情報整理と承認
移行共通部分や既存機能への影響URL・データ・管理環境の移行
次の変更同じ修正を繰り返す可能性追加や更新に必要な作業
運用現在の不便さが残る範囲新しい操作・体制の習得

初期費用が低くても、更新のたびに外注や社内作業が必要なら、その費用と時間がかかります。見積もりに未定の作業があれば、何が決まると金額が出るかを尋ねましょう。未定の費用を除いた額で比べると、実際の負担を見誤ります。

制作会社への相談では、結論より判断材料を渡す

こうした条件を、相談前にすべて解決しておく必要はありません。現在のURL、困っている場面、今回達成したいこと、希望時期、社内の担当体制があれば、調査や提案の話を始められます。予算や決裁者が未定なら、未定であることも伝えます。

制作会社には「今の課題を解決する最小の範囲と、その案で残る課題を教えてください」と尋ねてみてください。新しく作るものだけでなく、検索から読まれているページや、今の問い合わせ受付をどう引き継ぐかも聞いておくと、提案が事業に及ぼす影響を確かめられます。

会社ごとに提案が違ったら、見ている課題と作業範囲を比べます。ある会社は原稿の改善まで含み、別の会社は表示の変更だけを想定しているかもしれません。前提の違いが分かってから、費用と日程を検討しましょう。

まとめ|作り直す範囲は、解決したい課題から決める

作り直す範囲は、見た目の古さではなく、困っている原因がどこまで広がっているかで決まります。全面リニューアルか部分改善かを決める前に、今のサイトで困っていることと、役立っているものを挙げてみてください。制作会社には、残せる部分と直す部分、その判断理由を尋ねます。改修範囲が分からない段階なら、まず現状の診断を依頼するところから始められます。

全面改修か部分改善か、迷っている方へ

全面リニューアルを前提にせず、現在のサイトと目指す状態を伺い、調べるべき箇所と必要な改修範囲を一緒に整理します。

中村 和正

この記事を書いた人

中村 和正

株式会社gracenote 代表取締役 / 一般社団法人日本Web協会 会長

Web制作・ディレクション・マーケティングの実務を経て、2018年に株式会社gracenoteを設立。Webサイトの設計・改善支援と、Webディレクターの人材育成に携わっています。著書に『「買わせる」の心理学』。

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