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Web制作は誰に何を頼む?制作チームの役割と依頼範囲

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Web制作は誰に何を頼む?制作チームの役割と依頼範囲

初めてWebサイトの制作を任されると、「デザイナーに頼めば一式そろうのでは」と考えがちです。ところが、見積もりを取ってみると、ディレクション、デザイン、ライティング、実装と、知らない名前の項目が並びます。そして、どの項目を頼んでも、自社の誰かがやらなければならない仕事が残ります。

誰に何を頼むかは、職種名だけでは決まりません。同じ「デザイナー」でも、文章まで作る人もいれば、渡された原稿を配置するだけの人もいるからです。頼むときに決めるのは、仕事ごとに「どの状態まで仕上げて渡してもらうか」と「それでよいと決めるのは誰か」の2つです。作業の多くは外部に頼めますが、決める役割の多くは発注者の側に残ります。

Web制作の5つの仕事ごとに作業する人と決める人を分け、作業は外部に頼めても決める人の多くは自社に残ることを示す図。

Web制作の仕事は、画面を作る前と後にもある

画面のデザインに入る前に、サイトの目的と対象を決め、お客さまが知りたい情報を集め、載せる順番を考える仕事があります。公開したあとにも、情報の更新や、数字を見て何を直すかの判断が続きます。デザイナーが受け持つのは、このうちの一部です。

よくある職種と、それぞれに頼むときに確かめたいことを並べると、次のようになります。

役割の例主な仕事頼むときに確かめること
ディレクション目的・要件・進行・判断の整理誰が全体を調整するか
デザイン情報を見て分かる形にする設計構成や文章も範囲に入るか
ライティング取材・原稿・表現の整理元の情報と事実確認を誰が担うか
開発・実装表示や更新機能、フォームの構築公開後の保守や更新はどこまでか
分析・改善アクセス状況の把握と改善の検討計測の設定や施策の実行も含むか

この表は、仕事の種類を知るための目安です。1人で複数の役割を受け持つ制作会社もあれば、役割ごとに別の人が担当する会社もあります。

なかでも欠かせないのが、全体の調整役です。決まったことと決まっていないことを整理し、原稿・デザイン・実装の条件が食い違ったときに関係者をつなぐ役割です。専門家を何人そろえても、この役割が空いていれば、調整は発注者のところへ戻ってきます。

同じ肩書きでも、引き受ける範囲は違う

「Webマーケティング対応」と書かれていても、広告の運用なのか、アクセス解析なのか、記事づくりなのかは会社によって違います。肩書きから範囲を推測すると、頼んだつもりの仕事が誰の担当にもなっていなかった、ということが起こります。食い違いやすいのは、次の3つの境目です。

ディレクターは、どこまで判断を手伝うか

日程や連絡の管理が中心のディレクターもいれば、サービスの打ち出し方や載せる情報の整理まで一緒に考えるディレクターもいます。事業の伝え方から相談したいなら、その判断を手伝う範囲が契約に入っているかを確かめます。進行管理だけを頼んだのなら、何を伝えるかを決めるのは自社です。

デザインと原稿の境目

デザイナーが文章まで作るのか、渡された原稿を配置するのかは、依頼の内容によります。仮の文章を入れたまま見た目だけを承認すると、本物の原稿が届いた段階で文字があふれ、レイアウトを組み直すことになります。ライターに原稿を頼んだ場合も、書かれた内容が事実か、載せてよいかを確かめるのは自社の仕事です。

実装と保守、計測と改善の境目

更新の仕組みやフォームを作ることと、公開後にサーバーやシステムを管理することは、別の仕事です。計測も、アクセス解析の設定を入れる作業、何の数字を見るかを決める作業、結果を見て何を直すか決める作業に分かれます。毎月レポートが届いても、次に何をするかを決める人がいなければ、サイトは何も変わりません。

頼むときは、作業名ではなく「渡してもらう状態」で伝える

境目の食い違いを防ぐには、頼み方を変えます。「原稿をお願いします」という作業名だけでは、箇条書きの材料を集めてほしいのか、そのまま載せられる文章まで整えてほしいのかが伝わりません。どちらを頼むかで、仕事の量も担当する人も変わります。

これは社内に頼むときも同じです。分担表に「原稿:営業部」とだけ書くと、営業部は見出しまで決めるつもりなのか、材料を出すだけのつもりなのかが分かりません。原稿を渡すつもりだったのに社内で書けなかった、という行き違いの多くは、ここで生まれます。「デザインに入る前に、見出しと文章の量が決まった原稿を渡す」のように、次の工程が受け取る状態で書いておきます。

渡すものには、誰が確認した状態なのかも添えます。事業責任者が承認した原稿と、担当者が仮に書いた原稿を同じ「完成原稿」として渡すと、デザインが進んだあとで内容が覆ります。確認した人が分かっていれば、受け取った側は、仮のまま進めるか確定を待つかを決められます。

外部に頼んでも、自社に残る仕事がある

制作会社が発注者の商品やお客さまのことを知るのは、依頼を受けてからです。サービスの条件、営業でよく聞かれる質問、載せてよい情報を伝える人が、自社に必要です。価格や対応できる範囲を最終的に承認する人も、制作を始める前に決めておきます。

例えば、広報が窓口になり、営業がお客さまからの質問を集め、事業責任者がサービスの説明を承認する、という分け方です。各部署がばらばらに修正を送るのではなく、窓口で一度まとめれば、食い違う指示を制作会社に届く前に見つけられます。

窓口担当者に、すべての決裁を背負わせない

窓口の仕事は、意見を集めて整理し、伝えることです。価格や契約の条件、ブランドの方針まで決める権限を持っているとは限りません。窓口が決められることと、経営者や事業責任者に聞くことを分けておけば、返事が止まったときにも理由を制作会社に説明できます。

承認する人が完成した画面だけを見る進め方も避けます。最後に「そもそも方向が違う」となれば、構成からやり直しです。構成や主な表現を決める段階で見てもらう日を、最初から工程に入れておきます。

情報を持つ部署には、渡してほしい材料を具体的に頼む

「原稿をください」とだけ頼まれても、担当の部署は何を書けばよいか分かりません。サービスの対象、よくある質問、対応できる範囲、提供までの流れなど、必要な項目を示して頼みます。文章を整える仕事を別に頼んでいるなら、最初から完成した原稿を求めなくて構いません。

写真、掲載の許可、ロゴのデータ、過去の実績資料も、ありかを知っている人がそれぞれ違います。窓口担当者がすべての部署を探し回るのではなく、材料ごとに持ち主と期限を決めて集めます。

1社にまとめるか、分けて頼むかは、つなぎ目を誰が持つかで選ぶ

デザインと実装を別々の会社に頼めば、得意な人を組み合わせられます。その代わり、両者のつなぎ目を誰が調整するかが問題になります。スマートフォンとパソコンでの表示の違い、画像データの形式、ボタンや見出しの使い方のルールなど、デザインから実装へ何をどの形で渡すかを、デザインを始める前に決めておく必要があります。決めずに進めると、デザインが終わってから資料の追加や作り直しが発生します。

1社にまとめて頼む場合も、つなぎ目がなくなるわけではありません。どの作業を外部の協力会社が受け持つのか、変更が出たときに誰が判断するのか、担当者が替わったらどう引き継ぐのかを確かめます。窓口の担当者が「確認します」と言ったあと、実際に誰が決めるのかが分かっていれば、返事を待つ時間も見込めます。

人数が多いから安心、1人だから不安、とは一概に言えません。必要な仕事を担えるか、受け渡しと確認の方法があるか、自社の窓口がどこまで調整を引き受けられるか。この3つで選びます。

分担表に「決める人」の列をつくる

ここまでの内容を、仕事、次へ渡す状態、作業する人、決める人の4列を持つ1枚の分担表にまとめます。コーポレートサイトを作る場合の例なので、実際の分担は、依頼先との契約や社内の体制に合わせて書き換えてください。

仕事次へ渡す状態作業する人決める人
サイトの目的と対象誰に何を伝えるかを1枚にまとめた資料制作側が整理案を作る事業責任者
原稿の元情報対象・質問・対応範囲などの素材営業・各部署窓口が不足を確かめる
原稿そのまま載せられる文章自社またはライター事業責任者
デザイン主要ページの画面デザイナー承認者(窓口が意見をまとめる)
実装・更新機能社内で更新できる状態のサイト制作側窓口(更新担当者の操作確認を受けて)
既存ページの移行残すページと転送先の一覧制作側自社
計測と改善見る数字と改善の優先順位設定は制作側自社
公開後の更新更新の手順と管理の権限運用担当者運用の責任者

表ができたら、決める人の欄が空いている行と、関係者全員が決める人になっている行を探します。前者は誰も判断しないまま止まり、後者は意見がまとまらずに止まります。

分担表の決める人の列で空いている欄を見つけ、担当者がペンで書き込もうとしている様子。

表は、最初の1ページを作るときに試してみると、本当に回るかが分かります。制作会社から質問が来たとき、社内の誰が答えるのか。変更の要望が出たとき、誰が優先度を決めるのか。実際のやり取りで空欄が見つかったら、担当を補ってから残りのページへ進みます。

公開を境に、役割は入れ替わります。制作中の窓口がそのまま更新を受け持つのか、営業や広報に移るのかを決め、情報と管理の権限を引き継いでください。

まとめ|職種より先に、仕事ごとの「決める人」を置く

Web制作では、画面を作る前にも後にも仕事があり、同じ肩書きでも引き受ける範囲は違います。誰に何を頼むかは、職種名ではなく、仕事ごとに渡してもらう状態と決める人で決まります。

  • 作業名ではなく、次の工程が受け取る状態で頼む。
  • 事実確認、掲載の許可、最終の承認は、外部に頼んでも自社に残る。
  • 1社にまとめるか分けるかは、つなぎ目を誰が調整するかで選ぶ。

企画から公開後の更新までを表に並べ、「作業する人」と「決める人」を書き込んでみてください。埋まらない欄が、発注の前に相談すべき点です。

誰に何を頼むか、整理したい方へ

社内の体制と依頼したい内容を伺い、役割分担と依頼の範囲を一緒に整理します。

中村 和正

この記事を書いた人

中村 和正

株式会社gracenote 代表取締役 / 一般社団法人日本Web協会 会長

Web制作・ディレクション・マーケティングの実務を経て、2018年に株式会社gracenoteを設立。Webサイトの設計・改善支援と、Webディレクターの人材育成に携わっています。著書に『「買わせる」の心理学』。

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