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Web制作のスケジュールで、発注者が確保しておきたい時間

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Web制作のスケジュールで、発注者が確保しておきたい時間

制作会社から工程表が届くと、公開日までの線が引かれていて、ひとまず安心します。ところが、よく見ると「原稿ご提出」「デザインご確認」「最終承認」といった行があります。この行の日数を使うのは、制作会社ではなく発注者です。

制作会社の作業が予定どおりに進んでも、原稿がそろわない、承認する人がつかまらない、という理由で公開は止まります。公開日を守れるかどうかは、制作会社の作業日数だけでは決まりません。

発注者が確保しておきたい時間は、大きく3つあります。原稿や写真などの材料をそろえる時間、届いたものを確認して返す時間、そして公開日の前後に動作や内容を確かめる時間です。どれも制作会社の側からは見えないので、自社で予定に入れておく必要があります。

発注者側の準備を工程に入れる。1. 原稿・素材、2. 社内の確認、3. 承認する人、4. 公開の確認。

工程表のなかから、自社の番になっている日を探す

工程表は、前の工程が終わらないと次へ進めない順番で並んでいます。構成が決まらなければデザインに入れず、原稿が届かなければページを組めません。発注者の番で止まれば、それ以降の作業がまとめて後ろへずれます。

ですから、工程表を受け取ったら、日数の割り振りより先に、自社が何かを渡したり決めたりする日に印を付けてください。制作会社の作業の横に、自社の作業と、そのために押さえておく予定を書き足すと、次のような形になります。かかる日数は案件によって大きく違うため、ここでは入れていません。

工程制作会社の主な作業発注者の作業押さえておく予定
要件の整理目的と範囲の整理公開日の理由と優先順位を伝える優先順位を決める人との打ち合わせ
構成掲載する情報と順序の案必要な情報がそろうか確認事業責任者の確認日
原稿・素材原稿の整理・作成元情報の提供、写真・実績の掲載許可各部署の提出期限、許可の回答期限
デザイン主要ページの画面作成意図どおり伝わるかを確認社内の意見の締め切りと返答日
実装更新機能・フォームの構築更新担当者の操作確認操作説明を受ける日
公開前後表示・動作の確認、不具合の対応内容の最終確認と承認、受信の確認承認者の確認日、公開日当日の担当と代理

事業責任者の出張、会社の休業日、撮影したい現場の繁忙期など、社内でしか分からない予定も、このとき制作会社に伝えます。制作会社は、その情報がなければ待ち時間を見込めません。

材料をそろえる時間は、書く時間より待つ時間で決まる

原稿づくりで時間を取られるのは、書く作業そのものより、その前後です。料金や提供条件が社内でまだ決まっていない、お客さまに実績の掲載許可を取っている、撮影の日程が先方の都合で決まらない。どれも、担当者が急いでも縮められない時間です。

工程表に「資料をそろえる」と1行だけ書くと、この待ち時間が見えなくなります。材料ごとに、今どの状態で、次に何が決まれば進むのかを書いておけば、遅れそうなものが早く分かります。

材料今の状態次に決めること
サービス原稿元資料はあるが、提供条件を確認中責任者が条件を確定する日
実績候補の案件を選んだ掲載許可を頼む担当と、断られたときの代わり
写真使える写真が一部足りない追加で撮影するか、別の素材にするかを決める日

許可や回答を待つものには、期限と代わりの案をセットで決めておきます。「この日までに返事がなければ、別の実績を載せる」と決めておけば、返事を待ち続けて全体が止まることはありません。

写真は、ファイルを送った時点で準備完了とは言えません。横長の枠に使いたいのに縦長の写真しかない、お客さまの許可が必要な写真しかない、となれば選び直しや撮影の時間が要ります。用途に合うか、載せてよいかまで確かめて、初めて渡せる状態です。

ありかの分からない資料も、探す時間を見込みます。ロゴのデータ、過去の原稿、ドメインの管理窓口などは、当時の担当者が異動や退職をしていると、知っている人を探すところから始まります。公開の直前になってドメインの管理窓口が分からなければ、新しいサイトへ切り替える段取りが組めません。

原稿は、1ページ分を先に仕上げる

全ページの原稿がそろうのを待ってから制作会社に渡すと、足りない情報が最後にまとめて見つかります。代表的なサービスか実績を1件分だけ先に仕上げてみると、1ページに必要な情報の量や写真の種類が分かり、残りのページの準備が具体的になります。

残りのページは、仮の原稿で先に進めることもできます。その場合は、見出し、価格、サービスの区分など、あとで変わるとページの構成に響く箇所を制作会社に伝えておきます。仮の原稿が、承認済みのものとして扱われないようにするためです。

確認して返す時間は、承認者の予定から先に押さえる

見落としやすいのが、届いたものを確認して返す時間です。制作会社が金曜日にデザインを送ってきても、月曜日になってから見てくれる人を探すなら、その週末の分も工程の一部です。確認のための予定を空けておくことも、発注者の作業です。

なかでも、最終的に承認する人の予定は先に押さえたいところです。事業責任者や経営者が完成間際の画面だけを見て、「そもそも方向が違う」と言えば、構成からやり直しになります。構成とデザインの段階で見てもらう日を、工程表が届いた時点で確保しておきます。すべての打ち合わせに出てもらう必要はなく、あとで覆ると影響の大きい判断にだけ、確実に関わってもらえば足ります。

社内の意見を集める時間も、別に取ります。届いた意見を順番にそのまま制作会社へ送ると、「ロゴを大きく」と「ロゴを控えめに」のように、前後で食い違う指示が混ざります。社内で意見を集める締め切りと、制作会社へ返す締め切りを分けて置けば、その間に窓口担当者が意見を整理できます。判断が割れたところは、割れている理由ごと制作会社に相談すると先へ進めます。

確認の往復を少なくするには、段階ごとに見るものを絞ります。構成の段階では、載せる情報と順番、各ページの役割を決めます。デザインの段階では、その情報が意図どおりに伝わるかを見ます。公開の直前は、内容の正しさと動作の確認です。デザインを見る段階で事業の方針から議論を始めると、確認の時間がいくらあっても足りません。

公開日の前後に、確認する人の1日を空けておく

公開の作業を制作会社が行っても、問い合わせのメールが自社に届くか、載っている料金や連絡先が正しいかは、自社でしか確かめられません。公開日に確認する担当者が休みだった、ということがないように、担当者と、その人が不在のときの代わりを決めておきます。

広告や告知を同じ日に始めるなら、何を確かめたら告知を出すのか、問題が見つかったら誰が止めるのかも、関係者でそろえておきます。

公開後しばらくは、社内から修正の依頼が集まります。すぐ直すものと、次の改善に回すものを分ける時間も見込んでおきます。工程表の終わりは公開日ではなく、ふだんの運用に引き継いだところです。

時間が足りないと分かったら、範囲と日付のどちらを動かすか

どれだけ準備しても、材料や確認が予定に間に合わないことはあります。そのとき、提出期限を過ぎてから「少し遅れます」と連絡するより、間に合わない見込みが分かった時点で相談するほうが、打てる手は多く残ります。何を、いつまでに、どの状態で渡せるかを伝えれば、制作会社は作業の順番を入れ替えられます。

選べるのは、公開する範囲を減らす、公開日を動かす、原稿の整理などを外部に追加で頼む、といった方法です。どれを選ぶかは、公開日の理由が判断材料になります。「できれば年度内に」という希望日なら日付を動かせますが、展示会やサービス開始に合わせた期限なら、動かせるのは範囲のほうです。日付を伝えるときに理由も伝えておけば、制作会社も選択肢を出しやすくなります。

部署ごとに違う期限を抱えていることもあります。営業は展示会に、採用は募集の開始に、広報は発表の日に合わせたい。すべてを同時に満たせないとき、どれを優先するかを決めるのは制作会社ではなく自社です。その判断をする人を、最初の打ち合わせの時点で決めておきます。

範囲を減らすなら、期限の日に何を伝えなければならないかを基準にします。展示会で新サービスを案内するなら、対象のお客さま、提供内容、相談の窓口を先に公開し、掲載許可を待っている実績はあとから足す、という分け方ができます。

工程表の公開日はそのままにして、間に合わないページの付箋を公開後の欄へ移している様子。

範囲を減らしても、省いてはいけない確認があります。公開する部分の情報が正しいこと、問い合わせが届くこと、更新や管理ができること。「仮の公開だから」と、誤った料金や送信できないフォームを残すのは本末転倒です。あと回しにしたページには、担当と、何がそろったら公開するかを書いておけば、最初の公開のあとに忘れられずに済みます。

まとめ|自社の準備と確認の時間も、工程表に入れる

公開日を守れるかどうかは、制作会社の作業日数だけでなく、発注者が材料をそろえ、確認して返し、公開の前後に確かめる時間で決まります。

  • 材料は、書く時間より待つ時間を見込み、許可や回答には期限と代わりの案を決める。
  • 承認者の確認日は、工程表が届いた時点で構成とデザインの段階に押さえる。
  • 時間が足りなくなったら、公開日の理由をもとに、範囲と日付のどちらを動かすかを早めに相談する。

制作会社から工程表が届いたら、自社の番になっている行に印を付け、その横に担当者と承認者の予定を書き込んでください。

公開時期と制作範囲を、一緒に整理します

希望する公開時期と、原稿や素材の準備状況をお聞かせください。進行や公開範囲を検討します。

中村 和正

この記事を書いた人

中村 和正

株式会社gracenote 代表取締役 / 一般社団法人日本Web協会 会長

Web制作・ディレクション・マーケティングの実務を経て、2018年に株式会社gracenoteを設立。Webサイトの設計・改善支援と、Webディレクターの人材育成に携わっています。著書に『「買わせる」の心理学』。

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