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Webサイト改善の社内提案で、伝えておきたい目的・費用・判断材料

Webディレクション
Webサイト改善の社内提案で、伝えておきたい目的・費用・判断材料

「サイトが古いので、リニューアルしたい」。そう社内に提案したら、「で、いくらかかって、何がよくなるの?」と聞き返された。そんな経験はないでしょうか。

聞き返されたのは、決裁者がWebに詳しくないからではありません。その一文からは、何のためにお金を使い、いくら必要で、自分が何を承認すればよいのかが読み取れないからです。決裁者が判断に使うのは、次の3つです。

  • 目的:顧客や社内の業務で、いま何に困っているのか。
  • 費用:制作費に加えて、社内の誰の時間をどれだけ使うのか。
  • 判断材料:ほかの案と比べてなぜこの案なのか、実施後に何で確かめ、今回は何を承認するのか。

提案が通るかどうかは、熱意や専門用語の分かりやすさより、この3つがそろっているかで決まります。

決裁者の「何のため?」「いくら?」「何を決める?」という3つの問いに、目的・費用・判断材料で答える社内提案の構成を示した図。

目的は「古いから」ではなく、困っている業務で書く

「見た目が古い」は、毎日サイトを見ている担当者には切実でも、決裁者にとっては今お金を使う理由になりません。目的に書くのは、顧客や担当者に実際に起きていることです。終了したサービスへの問い合わせが今も届いている、社内で更新できず、お知らせを載せるたびに制作会社へ依頼して公開まで数週間かかる、営業が商談のたびにサイトに載っていないサービス内容を口頭で説明している、といった状況です。

こうした問題なら、決裁者も自社の課題として認識できます。

確かめた事実と、原因の見立てを分けて書く

「問い合わせが減った」は、期間と件数を確かめれば事実として示せます。一方、「デザインが古いから減った」は、仮説にはなりますが立証するのは難しいです。ここを混ぜて書くと、決裁者は「本当にデザインのせいなのか」と聞き返し、話は目的の手前で止まります。

終了したサービスのページが残っている例で考えてみます。原因として考えられるのは、更新の操作が難しい、サービス終了の連絡がサイトの担当者に届いていない、公開を承認する人が決まっていない、といったことです。サイトを作り直して直るのは主に操作の問題で、連絡や承認の流れが原因なら、新しいサイトでも同じように古いページが残ります。提案書には、確認できたこと、考えられる原因、これから確かめることを分けて書きます。

「なぜ今か」は、社内の予定で答える

すべてを急ぎとして並べると、かえってどれが急ぎなのか伝わりません。誤った情報が載っている、フォームが動かない、更新が止まっているといった、放っておくと毎日影響が出るものは、今やる理由になります。好みのデザイン変更や、使い道の決まっていない機能は、待てる側に置きます。

時期の根拠には、社内の実際の予定が使えます。「新サービスの開始までに案内ページが要る」「サイトを管理している担当者が異動する前に、管理情報を引き継ぎたい」。こうした予定が書いてあれば、決裁者は今決める理由を自分で確かめられます。

費用は、見積書の外にあるものまで書く

制作会社の見積書に載るのは主に制作費ですが、改修にかかるお金はそれだけではありません。写真の撮影や素材の購入、今のサイトからの移行作業、予約や決済などの外部サービスの利用料、公開後の保守といった費用が承認後に出てくると、決裁者にとっては承認した金額が変わることになります。

社内の時間も、費用として書く

お金と同じくらい見落とされやすいのが、社内の人の時間です。新しいページの原稿を書く、写真を用意する、公開前に内容を確かめるといった作業の多くは、制作会社ではなく社内の担当者が受け持ちます。

誰が、いつ頃、どのくらいの作業を受け持つのかを書き、通常業務と両立できるかを、その人の上司にも確かめてもらいます。予算は承認されたのに、社内で動ける人がいない。この状態になると、公開日はずるずると延びていきます。体制も、予算と同じく決裁の対象に含めます。

見積書の項目は、できるようになる仕事に言い換える

見積書には「CMS構築」「カスタム投稿の追加」といった項目が並びます。決裁者が知りたいのは、その費用で社内の仕事がどう変わるかです。「カスタム投稿の追加」なら、「制作実績を決まった入力欄で登録すると、一覧ページと詳細ページに自動で並ぶようになる」と書けば、何にお金を払うのかが伝わります。

作り方や細かな仕様は別紙に回し、本文では費用と仕事の変化を説明します。決裁者は本文だけを、制作の担当者は別紙まで読めば済む形です。管理画面が新しくなっても、元になる情報が担当者に届かなければ更新は進みません。サイトで変えることと社内で変えることを同じ計画に載せておけば、決裁者は承認後に誰が何をするかまで見通せます。

判断材料は、比べた案と、実施後の確かめ方

推奨する案だけを出すと、決裁者は「ほかに方法はないのか」と聞き返すしかありません。比べた案を並べておけば、その問いに先に答えられます。

終了したサービスのページが残り、更新に数週間かかっている会社なら、例えば次のように比べます(説明用の例です)。

案解決すること残る負担・増える作業
部分改善誤った情報の削除と、更新の依頼・連絡の流れの見直し今の管理画面の使いにくさは残る
全面改修社内で更新できる管理画面に作り直す原稿の準備と移行作業、公開までの期間
現状維持当面の費用は保守のみ誤った情報への問い合わせ対応が続く

金額だけを並べると、決裁者の目はいちばん安い案に向きがちです。解決することと残る負担を並べれば、「この負担なら残してもいい」「これは残せない」と、自社の事情に照らして選べます。現状維持も、費用がかからない案としてではなく、問い合わせ対応という負担が続く案として書きます。

推奨案には、成り立つ前提と、切り替える条件を添える

推奨する案には、成り立つための前提を書きます。社内で原稿を用意できる、今の制作会社から管理権限を引き継げる、公開前に責任者が確認できる、といった条件です。前提を書かずに承認を取ると、途中でその前提が崩れたとき、追加の予算を頼み直すことになります。

あわせて、別の案に切り替える条件も書いておきます。「見積もりが上限を超えたら、最初の公開で作るページを絞る」「更新の担当者が決まらなければ、新しい機能は見送る」。条件が先に決まっていれば、状況が変わっても一から提案し直さずに済みます。

効果は約束せず、何で確かめるかを決めておく

問い合わせが増えることを期待していても、増えると約束はできません。営業の対応や商品の条件、広告など、サイトの外のことも結果を左右するからです。約束の代わりに、実施後に何を見て判断するかを決めておきます。

見るものは目的と対応させます。更新の負担を減らす提案で閲覧数を報告されても、決裁者は成果を判断できません。担当者が自分で更新できたか、依頼から公開までの日数がどう変わったかを見ます。最初に目的を業務の問題として書いておけば、確かめる項目もそこから決まります。

最後に、今回承認してほしいことを絞る

提案書を読み終えた決裁者が、何に「はい」と言えばよいかを1文で示します。制作会社の選定なのか、調査の実施なのか、予算の上限なのか、社内担当者の配置なのか。複数の承認が要るなら、それぞれ誰が決めるのか、どの順で決めるのかも確かめておきます。

原因がまだ分からず、改修の範囲を決められない段階なら、いきなり全面改修の予算を求めず、調査から承認してもらう方法があります。例えば次のように書けます。

項目記入例
今回決めてほしいこと現状調査の実施と、その費用の上限
確認した問題と根拠終了したサービスへの問い合わせが続いている。該当ページが更新されていない
推奨する対応更新が止まる原因(操作・情報の流れ・承認)を調べ、改修範囲を決める
費用と社内体制調査費は見積もり取得済み。社内は更新担当と営業窓口が聞き取りに協力
次に決めること調査結果をもとに、部分改善か全面改修かを改めて提案する

この時点では、全面改修をするかどうかは決めていません。それでも決裁者には、何を承認すれば次に何が分かるかがはっきり見えています。調査が終われば、その結果を根拠に次の提案を書けるので、目的も費用も今回より具体的になります。

承認済みの調査提案書の横で、担当者が調査結果のメモを見ながら次の改修提案を書いている机の様子。

否決や保留になったときは、費用、優先度、根拠の不足、体制のどれが理由だったのかを聞いておきます。理由によって、次に集める材料が変わります。言葉を強くして出し直す前に、足りなかった材料を補うほうが先です。

まとめ|目的・費用・承認の範囲がそろえば、決裁者は選べる

社内提案で決裁者が見ているのは、判断に使える材料がそろっているかどうかです。目的は「古い」という感想ではなく、業務で起きている問題で書き、費用は見積書の外にあるものと社内の時間まで含めて書きます。判断材料には、比べた案と実施後の確かめ方を示し、そのうえで今回承認してほしいことを1つに絞ります。

書き始める前に、いま困っている業務、その根拠、推奨する案、費用の4点を1枚に書き出してみてください。原因が分からず範囲を決められないなら、調査の承認から始める提案にできます。

社内検討に向けて、改善の範囲を整理したい方へ

提案書を書き始めたものの、改修の範囲や費用の前提がまとまらない。そんなときは、サイトの課題と目指す状態から、検討する施策や依頼範囲を一緒に整理します。

中村 和正

この記事を書いた人

中村 和正

株式会社gracenote 代表取締役 / 一般社団法人日本Web協会 会長

Web制作・ディレクション・マーケティングの実務を経て、2018年に株式会社gracenoteを設立。Webサイトの設計・改善支援と、Webディレクターの人材育成に携わっています。著書に『「買わせる」の心理学』。

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